【目的】レジストリ研究におけるデータ収集の負担軽減および信頼性向上を目的として病院情報システムよりデータ収集および出力するシステムを構築した。

【方法】レジストリ研究において収集内容の定義を行うためのtsClinical Metadata、電子カルテシステムのテンプレートシステムであるeXchartおよび治験情報を管理するためのNMGCP（いずれも富士通社製）を用いて、試験で収集すべき臨床情報に関する項目定義からデータ提供までの一連の作業を行うシステム（cMTV Linkage）を構築した。また、上記システムについてはコンピュータ化システムバリデーションを実施した。

【結果】本研究により病院情報システムに実装した機能は以下のとおりである。
・研究で収集する項目、変数およびターミノロジーの管理
・データ収集の為の電子カルテテンプレートの半自動生成
・データ収集に関する進捗管理
・試験Visitに合わせたデータ成形およびCDISC CDASH ODM出力

【考察】本システムはレジストリ研究におけるデータ収集の効率化を目的として構築した。レジストリ研究においては、データを長期間収集・提供することが必要であり、原資料の管理からEDCへの転記等における病院負担が問題になると考えられるが、本システムの導入によりそれらの負担が一部軽減されると考えられる。また、本システムはレジストリ研究だけではなく、治験や臨床研究におけるデータ収集の効率化に寄与できると考えている。本システムは、富士通社製電子カルテの標準機能もしくは事例適応機能として同様の構成を有する施設で利用可能となっている。上記により広い範囲の施設で病院情報システムデータを研究利用できる環境が整備されると考えられる。一方で、本研究では医療者にテンプレート入力を促す機能やインターフェースに関する検討は行わなかったため、今後の検討課題であるといえる。