一般社団法人 日本医療情報学会

[4-F-1-02] 臨床ゲノム情報の精密医療への二次利用:薬物代謝能予測から薬効予測に向けて

高岡 裕1,2,3、大田 美香1,3、菅野 亜紀1,3,4 (1. 神戸大学医学部附属病院医療情報部, 2. 熊本大学生命資源研究・支援センター ゲノム機能分野, 3. 神戸常盤大学ライフサイエンス研究センター, 4. 名古屋大学医学部附属病院メディカルITセンター)

molecular simulation analysis, mathematical model, in silico prediction, conjugation capacity, UDP-glucuronosyltransferase 1A1 (UGT1A1)

【背景】がん化学療法の有効性は、抗がん剤の(1)薬物代謝、(2)薬効(感受性)から評価可能であるが、未知の新規遺伝子変異の場合は評価が困難になる。現在、抗がん剤イリノテカン投与前には薬物代謝酵素のUGT1A1の遺伝子検査が必須であるが、UGT1A1の遺伝子多型が抱合能を低下させるためである。すなわち、プロモーター領域の変異ではUGT1A1の量的減少が、アミノ酸変異では質的劣化が抱合能を低下させる。今回UGT1A1のアミノ酸変異をモデルとして、分子シミュレーション解析とウエット実験の結果から数理モデルを導出し、薬物代謝能予測での有用性を検討した。

【方法】変異体の立体構造は、正常型ヒトUGT1A1の立体構造(ModBase ModelID: 2420a568b0f3d1b1fe06fc34a94eee40)のアミノ酸置換(G71R, F83L, P229L, P229Q, L233R, I294T, I322V, R336L, H376R, P387S, N400D, W461R) 後に、MOEソフトウエアで構造最適化し決定した。次に、補酵素(UDPGA)と基質(AAP, E2)のドッキング解析を行い基質結合の向き(Takaoka et al., J Biochem148, 25-28, 2010)を集計し、in vitro実験結果も用いて、in silico抱合能の数理モデル(特許第5447383号)を導出した。最後に、ビリルビンとSN-38を基質とした場合のin silico抱合能を求め、既報と比較した。

【結果・考察】in silico抱合能はin vitro抱合能を高い精度(R > 0.9)で予測できており、薬物有害反応予測を可能にした、現在、分子標的薬の標的分子(EGFR)の変異を対象に、薬効不明な変異EGFRの薬効評価を可能にすべく、同様の解析を進めている。