Japan Association for Medical Informatics

[4-F-1-03] 1細胞遺伝子発現時系列データの遺伝子相関ネットワークによる分析

浅野 泰仁1、小倉 淳2、七野 成之3、上羽 悟史3、松島 綱治3 (1. 東洋大学, 2. 長浜バイオ大学, 3. 東京理科大学)

Single-cell transcriptome, Time sequence, Network analysis

慢性炎症の予防には,未病状態(自覚症状を伴わない組織病変)の検出と,その時点での早期対処が重要であると考えられている.そのためには未病のメカニズム解明が求められるが,未だにその全容は明らかになっていない.一方,近年確立された包括的1細胞遺伝子発現解析技術によって,これまで細胞群単位でしか得られなかった遺伝子発現データが1細胞単位で取得できるようになった.この1細胞単位の遺伝子発現データの分析のために,ノイズ除去を行うMAGICや,擬似的に時系列分析を行うMonocle等の手法も開発されてきたこともあり,包括的1細胞遺伝子発現解析技術の様々な分野での活用が期待されている.未病のメカニズム解明のためにこの技術を活用した研究も始まっており,メカニズム解明につながると期待される知見が得られるようになってきている.本研究では,病状が進行するにつれて遺伝子の発現量の変化が観測されることから,遺伝子間の関係も病状の進行によって変化するのではないかと考え,それを分析するための遺伝子相関ネットワークとその可視化手法を提案する.具体的には,1細胞単位の遺伝子発現の時系列データを入力とし,各時点の発現データから遺伝子発現量の相関を求め,相関の絶対値が大きい遺伝子対に辺が存在するようなネットワークを作成する.さらに,ネットワークの変化を捉えやすくするために,全時点に対して遺伝子の位置を統一した可視化を行う.このネットワークの時系列変化を,グラフ理論的アプローチで分析することにより,未病の検出やそのメカニズム解明に繋がる知識が得られると期待される.その分析の手始めとして,ブレオマイシン投与による肺線維症誘導マウスから作成した1細胞単位の遺伝子発現の時系列データに提案手法を適用し,病状の進行に対して遺伝子相関ネットワークにどのような変化が見られるかを観察した.