Japan Association for Medical Informatics

[4-F-2-01] イングランドにおける医療情報の二次利用の制度やシステム構築から日本の制度基盤を展望する

佐々木 香織1、木村 映善2、大寺 祥佑3 (1. 小樽商科大学, 2. 国立保健医療科学院, 3. 京都大学医学部附属病院)

Health Policy , Public Trust, Opt-out, England, Ethics

日本でも次世代医療基盤法の施行に伴い、認定事業者による要配慮個人情報を含む情報収集と匿名加工医療情報の提供が可能となる。本邦より先んじて利活用を推進したイングランドの医療情報政策―特にcare-dot-data(2013-2016)―においては、医療データ提供過程もデータ利活用の方向性も、医療現場から市民社会に至るまで大混乱を引き起こし、その政策は頓挫してしまった。しかし同様な政策が近年にも実施され、今度は医療データ利活用の発展がこの数年は著しい。この頓挫から成功に至るまでの経緯に学ぶことで、日本も現状を乗り越える方策を見いだせるという仮説を立てた。

この理解の下、筆者らは文献調査と以下3団体から聞き取り調査を実施して、その努力を詳らかにした。①NHS Digital:病院の医療情報を吸い上げ管理し、更に情報処理加工を行う機関;②Clinical Practice Research Datalink (CPRD):一次医療圏の医療データに特化した機関;③Health Research Authority (HRA):医療・保健研究を健全に促進させることを目的とした保健省の外郭団体。結果は以下の四点に集約された。ⅠNHS Digitalによる精緻で丁寧なopt-outの仕組みと市民広報の整備;Ⅱ 市民社会からの信頼の整備としてNHS DigitalとCPRDによるデータ利活用に対する「第三者委員会」を用いたチェック体制とデータ利活用の公表システムを確立;ⅢHRAを主導とした個々の利活用事例に対する助言体制;ⅣNHS DigitalとCPRDのデータを利活用する研究に対する「第三者委員会」の審査体制の整備。本発表はイングランドの事例を参考として本邦の制度設計へ応用する方法を議論し、特に各種の専門職員育成が急務となることを結語としたい。