Japan Association for Medical Informatics

[4-F-2-04] 本邦がフィンランドにおける医療情報の二次利用の実態から学べること

大寺 祥佑1、木村 映善2、佐々木 香織3、黒田 知宏1 (1. 京都大学医学部附属病院, 2. 国立保健医療科学院, 3. 小樽商科大学)

medical record linkage, registries, health policy

本邦では次世代医療基盤法の施行により、認定事業者による要配慮個人情報を含む情報収集と匿名加工医療情報の提供が可能となる。フィンランドではオプトアウトによる医療情報の収集や個人単位のデータの連結が行われ、その現状を知ることは本邦における今後の医療情報の利用を促進する上で有意義な示唆を与える可能性がある。本研究の目的はフィンランドにおけるデータの蓄積や連結の方法、利活用の実態について調査することである。そのために関係者への面接と論文を中心とした文献調査を行った。フィンランドではTHL(国立健康福祉研究所)、Statistics Finland(フィンランド統計局)、Kela(社会保険協会)の3機関がナショナルレジスタを運用しており、個人識別番号(PIN)を利用したデータソース間の連結が可能である。THLではがん登録や死因等のレジスタを所管している。さらにTHLは全国規模のBiobankを運営し、遺伝情報と他のレジスタの連結を促すFinnGenプロジェクトを進めている。Kelaは社会保障費の給付等を行う政府機関であり、KanTaと呼ばれるシステムによって全国の医療機関等から患者情報を収集している。患者はポータルサイト(MyKanTa)を通じて、受診履歴の閲覧や情報提供の拒否の機会が与えられている。Statistics Finlandは死亡診断書のアーカイブ等を有しており、THLのレジスタとの組み合わせにより統計情報の作成等を行っている。なおフィンランド研究開発基金(SITRA)の調査によると、フィンランド国民は医療機関や統計当局に対して高い信頼を抱いていることがわかっている。フィンランドではPINの導入や国民からの高い信頼を背景に、各種レジスタや医療情報の連結によるデータの利活用が進められている。これらの取り組みは本邦で匿名加工医療情報の運用を行う上で参考になると考えられた。