Japan Association for Medical Informatics

[4-F-3-01] 病院の特徴を考慮した検査基準範囲の推定手法

兵頭 勇己1、永田 桂太郎1、畠山 豊1、奥原 義保1 (1. 高知大学医学部附属医学情報センター)

reference intervals, laboratory tests, ordering patterns, unsupervised learning

【背景】検体検査の基準範囲や臨床判断値の決定はコストを要するため、病院情報システム(以下、HIS)上の検査結果から推定する試みがある。一般に病院機能は専門分化しており、それぞれの患者層の特徴を考慮して推定する必要があるが、既存手法は考慮されていないものも多い。本研究は特定機能病院のデータを対象とし、検査オーダの間隔という容易に取得できるデータを医師の臨床判断を含んだ情報として解釈、臨床上問題ない検査結果を抽出するための重みとして利用した新たな基準範囲推定手法を構築し、評価した。

【方法】高知大学医学部附属病院のHISデータから、外来診療にて血液検査を実施した患者を対象とした(1981〜2016年)。検査項目は血球数算定等の40項目とし、検査時年齢、性別、結果値、次回同一検査オーダまでの日数(以下、検査間隔)のデータを抽出した。解析手法は、ある検査項目の結果データセットに対し、検査間隔の対数変換値および、その逆数を重みとした再標本化を行い2つの分布を得た。これらの分布の2.5%分位点および97.5%分位点を推定された基準範囲の下限および上限とし、本病院の基準範囲と比較した。

【結果】検査40項目の検査回数および検査間隔の中央値は361107回、56.0日であった。推定された基準範囲は、クレアチンキナーゼ(男性)50-241UL[基準範囲59-248UL]、乳酸脱水素酵素(男性)124-225UL[基準範囲124-222UL]など、基準範囲に近い値を推定できた。

【考察】多くの検査項目において、検査間隔は検査結果の臨床判断に関する情報を含み、HISデータから基準個体を抽出し、検査値の分布を推定するために活用できる有用な情報であることが示された。本手法を応用することで、年齢や病態等の違いに応じた基準範囲を、HISデータから迅速かつ自動的に抽出できると考える。