Japan Association for Medical Informatics

[4-I-1-01] エンドユーザーの声はどうすれば開発者に届くのか?

太田原 顕1 (1. 独立行政法人労働者健康安全機構 山陰労災病院 循環器科)

【事例】2017年2月当院は両備システムズから富士通(F)へシステム更新時にベンダー変更を行なった。当院は鳥取県「おしどりネット」へのデータ提供病院として拡張ストレージにすべての医師記録・看護記録を出力してきた。しかし、ベンダー変更後エンドユーザーから不具合の報告が複数寄せられた。調査の結果、F社は主文書記事のみの出力が標準仕様でその他の要求は加算請求分と説明した。当院はそのポリシーに同意できず、おしどりネット協議会の協力を得て富士通と標準仕様の見直しについて検討と開発を進めている。

【問題点】1、F社社内では2018年1月の回答でユーザーは要望を収めたと解釈され、開発部には案件として伝達されておらず、棚上げ状態であった。

2、F社の電子カルテの記述仕様はオーダ情報と混在した設計で、導入時に各医療機関に対して主文書記事以外のテンプレートなどを用いての記載を推奨していたが、SS-MIX2への標準仕様の出力設計は主文書記事のみであった。

3、ユーザー側からは出力されるべき診療録がパッケージに標準装備されていないことは重大なエラーで、業界全体の問題であると認識された。

4、当院導入時の担当開発チームに2、が標準仕様という開発部の意向は浸透していなかった。

5、複雑な組織体制の為、開発部へ当院担当サブベンダーとの情報共有不足があり、契約上おしどりネットと開発部は契約状態ではなかった。

6、開発時の医療者(病院導入およびおしどりネット)側からの仕様の提示にあいまいな部分が残されていた。

【考察】この事例を通してシステム設計思想の欠点、エンドユーザーの問題指摘に対する組織内ガバナンスやコミュニケーションの問題が明らかとなった。エンドユーザーによる指摘が潰されることなく組織を越えて関係者、特に開発部に伝えることができたのはなぜか事例を通して検証する。これはインハウスや小規模組織の場合も同じ構図があると考えている。