Japan Association for Medical Informatics

[4-I-1-05] 病院情報システムの更新における重症病棟システムの問題点

岡垣 篤彦1 (1. 国立病院機構 大阪医療センター)

 大阪医療センターでは病院情報システムの入替えを令和2年1月に予定しているが、重症システムの運用が大きな問題となった。重症病棟では観察項目が多くなるが、これら観察項目の変化を見逃すと重大な結果をもたらす可能性があるためである。一方一般病棟と異なるシステムのため、使用方法の習得や一般病棟との転棟時に観察項目や指示等の引き継ぎができないことが問題となった。当院の現行の運用は術後のリカバリーおよび救命病棟の外科、脳外科、循環器内科、心臓外科は一般病棟のシステムを使用し、救命救急のみ重症システムを使用することとなっていたが、同じ病棟で二つのシステムを併用するために看護師の負担が大きくなっていた。
 今回の導入ワーキンググループ(WG)では術後回復室として重症病棟を使用している診療科を中心に重症システムの使用に強い反対があったが、他院の運用も参考にした上で、重症病棟で診療する患者を一般病棟のシステムを用いて管理するのは危険が伴うとの救命救急部の意見が取り入れられた。他科が使用する条件として、一般指示や注射オーダ、観察項目について一般病棟と重症病棟の移床の際に引き継ぐことが求められた。
さらに重症病棟での注射薬の処方の際に禁忌薬チェックがかからないことが大きな問題となり、薬剤部で使用している薬剤情報システムの禁忌チェックの仕組みを重症病棟でも使用することとなった。
 このような重症病棟の運用の難しさは以前から断片的に指摘されていたが、ベンダーの認識不足と病院側の導入検討WGの準備不足のため導入直前になってから問題化することとなった。当院では外科系診療科が理性的な判断を行ったが、最悪の場合危険な運用を継続するという決定がなされる可能性もあった。利便性を確保するためには業務とシステムに対する正確な認識を行える熟練した導入チームの存在および他院の運用の情報収集が必須であることが痛感された。