Japan Association for Medical Informatics

[4-I-1-06] 電子カルテカスタマイズの功罪とユーザーメードによる補完

山本 康仁1 (1. 東京都立広尾病院)

 当院では2度目の電子カルテ更新を控え、電子カルテパッケージのカスタマイズの功罪に関して考察した。2003年にそれまでのオーダーリングベンダーを変更し最低限のデータ移行のみ行い、電子カルテを導入した。

 8病院の電子カルテを順に展開し、5年以上かけて先行導入病院の知見を踏まえ積極的にパッケージシステムのカスタマイズを行った。そこで生まれた都立版EXは、注射カレンダーの大幅な刷新を中心に、レジメン機能、インシュリンスライディングスケール、テンプレート型指示簿機能などが開発され導入されるに至った。

 中でも都立版注射カレンダーは2度に渡る大幅な機能追加を経て、重症系と一般病棟両方を対象に、頻回に修正される持続注射と、抗がん剤などの投与量依存持続注射の両方のオーダーと実施記録を、病院全体で利用出来るよう設計された。

 しかしカスタマイズ部分は標準に取り入れられず、パッケージとの差を広げ、更新時のデータ変換作業が増加、再利用できない参照移行が発生した。カスタマイズ範囲も縮小し、少なからず現場は混乱した。またカルテ以外のサブシステムとの更新時期のずれは、下位互換の連携フォーマットを理由に機能向上を阻んだ。

 2011年の第一回更新時に顕著化した問題を受け、機能差分を埋めるべく救急看護支援システムとして稼働していたユーザーメードシステムを外部のサービスバスとして再構築した。更新時期が異なる手術実施システム記載を電子カルテに反映させるなど、システム連携の一部を担わせるとともに、電子カルテのカスタマイズを抑制、あわせてユーザーメードシステム側もパッケージの機能向上に合わせて機能を整理削減した。2度目の更新を前に、ユーザーメードシステムに統合ビュアー機能や未読管理などを加え、スムーズな更新を目指している。パッケージとユーザーメードの機能的な役割分担に影響したのは、組織構成と構築時間であった。