Japan Association for Medical Informatics

[4-J-1-01] オンライン診療は医療のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の入口

近藤 博史1,2 (1. 遠隔医療学会 会長、2. 鳥取大学医学部附属病院 医療情報部)

医療のデジタル化が進み、海外の学会ではDX(digital transformation)の言葉をよく聞く。アマゾンの書籍販売がオンラインのコンテンツ販売に変わったことが事例にあげられるDXであるが、医療でもオーダやカルテの電子化から人工知能(AI), 携帯、IoT, Robotの利用により大きく変化する。

オンライン診療は診療所の外来をTV電話ですませるものだけではない。同時にオンラインのモニタリング、或いは症状、気分、活動の日常の記録がされる。これらはこれまで得られなかった新たな情報である。精度の問題もあるが、大量であったことも利用されなかった理由である。携帯とクラウド技術、小型化したセンサーはこれらを利用できるようにした。さらにAIは高速分析し、指針を出す。

医療の対象も変化した。20世紀までの敵、感染症は対策され、生活習慣病が最大の敵になり、日常生活での予防が重視され、既存の医療では遅れをとっている。日常生活に密着した医療が効果的である。大学病院でもオンライン診療が開始され、診療所、中核病院、大学病院の順番も不要で、直接専門医が患者を診療できる、あるいは専門医の知識をAIが用いて最初の段階から利用できる時代も近い。

この夢の実現には幾つもの課題がある。小さい携帯の画像では診断できる対象が画像に依存する。既存の電子カルテとの連携では、データ量、精度、データの標準化が必要である。小型センサー、IoT関連の開発も日本では遅れている。これまでの電子カルテが閉じた世界のからインターネットに出ていくため、通信帯域と伝えられる情報の関係と遅延対策が必要であり、情報漏洩対策にはアクセスコントロールの方法とログ保存、情報消去のタイミング、暗号化、通信相手の確認方法など最新のインターネット技術が必要である。また、実際の運営には支援対策、緊急時対策等総合的に、効果的な計画が必要である。