Japan Association for Medical Informatics

[4-J-1-02] 小児地域医療におけるオンライン診療 -現状と課題

黒木 春郎1 (1. 医療法人社団嗣業の会 外房こどもクリニック 理事長)

演者は千葉県で小児科診療所を2005年に開設し運営している。医療過疎地域での展開であり、複数医師による診療体制を取っている。診療圏は30km程度であり、遠方の患者さんは100km程度から通院されている。小児科二次医療施設は50km先である。2016年6月にオンライン診療を導入した。オンライン診療の適応として、医師患者の信頼関係が確立していることと、問診と指針で診療可能な状態であることを考えた。現在まで述べ383名の患者さんをオンライン診療により診療した。その疾患、年齢区分、居住地を示す。

また、オンライン診療を受けた児と保護者に構造的質問による調査研究を行った。逐語録を質的研究方法により解析した。保護者はビデオチャットによる診療の利点も限界もよく理解されていることが明らかとなった。

実際の事例を提示する。通院アドへレンスが不良例、神経発達症、全介助が必要な重度心身障害、複数アレルギー疾患の例などが典型的な適応例と考えられた。この中で、改めて気が付いた点は、ビデオチャットでの診療により児の家庭の様子がわかることである。在宅医療の感覚である。また、ビデオチャットは極めて私的な限定された空間である。児も保護者も写状の外来診療よりもリラックスしている。これらの知見は、オンライン診療によって得られる情報は従来の外来診療とは質が異なるものであることを示す。すなわち、オンライン診療は外来診療の単なる代替ではなく、新しい診療概念となることを示唆する。

筆者はオンライン診療を、入院・外来・在宅に次ぐ新しい診療概念と考える。また、当地域のような医療過疎地域のみならず、都市部においても十分に活用できる方法である。現状では診療報酬の疾患別制限により、保険診療によるオンライン診療は抑制されている。診療報酬の疾患制限に医学的には根拠はない。現状の診療報酬の根本的な改革を望む。