Japan Association for Medical Informatics

[4-J-1-05] 医療の均霑化を目指す遠隔医療:telestroke、teleneurologyの現状と展望

長谷川 泰弘1 (1. 聖マリアンナ医科大学脳神経内科)

診断・治療の経過に専門医等がかかわることで、正確な診断、良好な治療成績を得ることができる疾患は多い。対象疾患に対応できる専門医が不在の施設において、患者の病状(急性疾患、難病等)により専門医のもとに受診させることができない状況にある患者については、遠隔医療により得られる恩恵は特に大きいものと思われる。急性期脳梗塞における血栓溶解療法もその一つである。血栓溶解療法の効果は高く、適応のある脳梗塞患者には行うべき治療であるが、実施には定められた神経診察を行い、血液検査、画像検査等で禁忌事項のないことを、発症4.5時間以内に施行しなければならず、専門医不在の時間帯、専門医不在の施設に搬入された患者は、その恩恵をうることができない。諸外国では脳卒中に特化した遠隔医療(telestroke)が、Hub and Spokeのネットワークの中で実施され効果をあげている。対面診療の補完として開始されたオンライン診療とは異なる点が多いことから、その実施には機器の条件、診療報酬の在り方、運用指針作成など、いくつかの整備が必要であるが、すでに諸外国では10年以上の経験がある日常的医療であり、導入に大きな障害は見当たらない。Telestroke network の構築は、遠隔地の医療レベル向上に寄与するだけでなく、新規治療の開発加速化の点においても注目されており、telestrokeを用いた疾患特異性の高い臨床スケールを用いた転帰評価も行われている。Telestrokeの成功により、難病患者の診断・治療を遠隔で行う teleneurologyの有用性も明らかとなってきた。パーキンソン病におけるmodified UPDRS評価や希少難病の治療効果を遠隔で確認することによる通院費用軽減策など、遠隔医療の恩恵を受ける患者は多く、DtoPのみならずDtoD、DtoDtoPの遠隔医療についても保険収載を行い、日常診療の一つの形態として早急に成熟させる必要がある。