Japan Association for Medical Informatics

[4-J-1-06] オンライン診療、次の推進戦略への展望

長谷川 高志1 (1. 特定非営利活動法人日本遠隔医療協会)

日本の遠隔医療に於いて、平成30年度のオンライン診療料の保険収載と「オンライン診療の適切な実施に関する指針」制定は大きな変革である。これに伴い、従来の推進策の大半が役割を終え、新たな研究開発や推進戦略が必要となった。変革後の最初の一年間の状況の推移を捉えて、下記の各視点より課題抽出して、新戦略を推進する方策を考えたい。

第一点目として、臨床現場の問題把握が重要な視点である。高い潜在的価値が期待されるオンライン診療だが、実施件数の伸びは鈍いと考えられる。臨床、経営、支援環境、地域性など様々な課題や制約の存在が指摘される。真の課題を捉え、対策を考える必要がある。第二点目としてプライマリケアに留まらず、専門診療科でのオンライン診療の活用が進み。実施体制確立のための課題を捉える視点がある。第三点目として診療手法や機器の研究開発への視点がある。テレビ電話による診察に留まらず、各種疾病について、日常生活に深く浸透できる情報収集・観察や指導・介入するためのデバイス類の研究開発が期待される。重症患者の日常生活復帰やリハビリテーション、重症化予防、再入院抑制など、遠隔医療による新しい医療の世界が広がる。第四点目として、医師法関連の指針、医療計画、疾病対策など政策の次の方向を見極める視点がある。第五点目に診療報酬や財源を充実させるための戦略立案の視点がある。内科系学会社会保険連合(内保連)などでは、今後の遠隔医療に関する医療技術評価の論点を整理して、報酬拡充の戦略を検討している。

第一から第五の視点について、新制度発足までは基本的技術や手法開拓が重要だった。しかしながら、この一年間で対象が大幅に広がり、より広い対象への診療手法やデバイスの研究開発が追いつかない状況と考えられる。各視点の新たな知見を集約して、遠隔医療推進の場を活性化することが社会的課題である。