Japan Association for Medical Informatics

[4-P1-3-05] 注射技術教育における経験学習促進システムの提案

安達 健二1、真嶋 由貴恵2 (1. 大阪府立大学 工学研究科 電気・情報系専攻 知能情報工学分野, 2. 大阪府立大学 人間社会システム科学研究科 現代システム科学専攻)

Tacit Knowledge, Skill Education, Kolb's Experiential Learning Theory, Learning Support System

注射技術教育はその「暗黙性」から困難であるとされている。
その「暗黙性」を可視化するため下記のような様々な研究を著者らは行ってきた。
(1)看護師へのインタビュー調査による、成功時の刺入感覚の言語化
(2)注射技術実施時の視線分析による、初学者と熟達者の特徴の違いの分析
(3)手指用モーションキャプチャを用いた注射技術実施時の手指動作の分析
(4)「脳波」「心拍」データの分析から得た手技実施時のリラックス状態と緊張状態を、初学者と熟達者で比較分析

これらの研究から、熟達者と初学者の差異、並びに獲得すべき知見(=暗黙知)は明確になってきたと言える。
しかし以前、「暗黙知」の獲得方法については明確になっておらず、その具体化や実践は急務である。

そこで本研究では、注射技術教育における「暗黙知」の獲得を支援する方法について検討、システムの提案を行う。

【「暗黙知」獲得方法の検討】
注射技術などの行動を伴うスキルを扱う分野として、人材育成の文脈の中に「経験学習」が挙げられる。
今回は「経験学習」の代表的なモデルである、コルブの経験学習モデルをもとに注射技術における「暗黙知」獲得方法の検討を行った。

コルブの学習モデル
(1)具体的経験: 学習者が環境(他者・人工物等)に働きかけることで起こる相互作用
(2)内省的観察: (1)の作用を振り返り、意味付けを行うこと
(3)抽象的概念化: (2)の意味付けをもとに、抽象化し他の状況でも応用可能な知識・ルール・ルーチンを生み出すこと
(4)能動的実験: (3)で生み出した知識・ルール・ルーチンが実際に適用可能なものかの検証を行うこと

【システム提案】
上記の要素のうち、学習者が個人で行う要素であり能力に依存しやすいと考えられる(2)、(3)を支援することで、「暗黙知」獲得への期間短縮が期待できると考え、それぞれに対する支援システムを提案する。