Japan Association for Medical Informatics

[4-P2-3-03] GISによる救急搬送シミュレーションの妥当性の検証

谷 松子1、藤原 健祐1、上村 修二2,3、葛西 毅彦2,3、奈良 理4、森井 康博1、小笠原 克彦1 (1. 北海道大学大学院保健科学院, 2. 札幌医科大学 救急医学講座, 3. 札幌医科大学 北海道病院前・航空・災害医学講座, 4. 医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院 救命救急センター )

GIS, Emergency Transport, Validity

【背景】近年、地理情報システム(GIS)の医療分野への応用が進んでおり、その一つとして、医療機関へのアクセシビリティを評価するための救急搬送シミュレーションが報告されている。救急車は一般の自動車と走行ルールが異なるため、一般的に利用されている道路情報を用いたシミュレーションでは十分な精度が得られない可能性がある。本研究では、GISによるシミュレーションの妥当性の検証を目的として、予測した搬送時間と実際の搬送時間の比較を行った。

【方法】平成25-28年に札幌医科大学病院へ搬送された1,460例の現場から病院到着までの時間を実際の搬送時間として利用した(実データ)。発症地点の住所に基づき、ArcGIS Network Analyst(ESRI Japan社)を用いて搬送時間を算出した(予測データ)。次に、実データを目的変数、予測データを説明変数とした回帰分析を行った。更に、北海道では積雪により搬送時間に季節間の変動が予想されるため、データを積雪期(11月から3月)とそれ以外に分けて、それぞれの予測データと実データの差分を地図上に可視化し、両群の差分のt検定を行った。

【結果・考察】全データの回帰式はy=0.70x+2.56 (R²=0.81)であり、傾きは1よりも小さく、実データよりも予測データの方が長い傾向があった。積雪期のデータとそれ以外の季節のデータにおいて、回帰式はそれぞれy=0.73x+2.96 (R²=0.79)とy=0.65x+2.46 (R²=0.81)であった。積雪期のデータの傾きはそれ以外の季節のデータの傾きより大きく、両群の差分のt検定では有意差が認められた(p<0.05)。以上より、GISによる搬送時間の算出シミュレーションは実データを十分に予測できるが、札幌市については季節の違いを考慮したシミュレーションの必要があると考えられる。