[2-A-1] 臨床データベースから見えてくること:ビッグデータを医療に活かす
Chronic Kidney Disease, J-CKD-DB, J-CKD-DB-ex, health and healthcare big data
日本腎臓学会はこれまで腎臓病総合レジストリー(J-KDR)を構築し、1 次、2 次研究を展開してきた。しかしながらJ-KDR には、①入力負荷が大きく、数万人規模以上のデータベース(DB)構築が困難、②予後調査等の前向き縦断研究が容易ではない、③ガイドラインが推奨する標準治療の普及や遵守率等を評価するためのQI調査が困難、④ 手入力によるため情報の精度と粒度等の問題があり、これを解決するため新たな手法によるDB構築が急務であった。電子カルテは診療情報の宝庫であるが、各社の仕様がバラバラで多施設からのデータ収集が困難な状況にある。一方、厚生労働省標準SS-MIX2標準化ストレージは、患者基本情報、処方、検査データ等を標準形式で格納するもので、多施設からのデータ収集を可能とする。
そこで日本腎臓学会は、日本医療情報学会の支援を得て、厚生労働省事業として包括的慢性腎臓病データベース(J-CKD-DB)の構築に着手した。登録にはMCDRSを用いている。尿蛋白1+以上かつ/またはeGFR60mL /分/ 1.73m2未満をCKDと自動判定して該当例の医療情報を一挙に自動収集しており、2020年1月現在、全国15大学病院より14万8千件を超える登録がなされている。現在テンプレート入力とSS-MIX2を組み合わせた2階層目のDB構築に着手している。
本セッションでは、最初に医療ビッグデータ解析のいまを俯瞰する。続いてJ-CKD-DB及び拡張版J-CKD-DB-exの概要と、その分析により見えてきた日本の腎臓病の実態について報告し、大規模臨床DBの意義を明らかにする。また、医療DBの臨床研究活用上の期待と課題を述べる。最後に内閣官房健康・医療戦略室より日本の医療ビッグデータ活用の設計図を講演いただき、今後、医療ビッグデータは医療現場にどう還元でき、その活用はどう展開すべきか議論したい。