Japan Association for Medical Informatics

[2-A-4-06] ePath事業3年目-解析の現況と現時点での総括-

*Hidehisa Soejima1 (1. 済生会熊本病院)

ePath, clinical pathway, analysis


2018年に始まったePath事業は本年3年目で最終年度を迎える。この間、多くの医療機関、ベンダーのご協力を得て、OAT(Outcome-Assessment-Task)を中心概念とした電子クリニカルパスのデータモデル作成、インターフェース・リポジトリーの開発、4医療機関協同のパス作成などをすすめ、本年4月より8パスの実データ収集を開始した。そのうち4パスの解析が臨床家を含め進められている。今後残りの4パスの解析を進め、さらにパス適応疾患群を増やしていきたい。解析の一義的目標はバリアンスを含めた薬剤、検査、コストなどほとんどすべての臨床プロセスデータを統合的に収集・解析できることである。解析法は一般的なバリアンス分析で行われるクリティカルインディケーターの探索、バリアンス・観察項目の詳細分析のほか、マインドマップや機械学習などを用いて、従来の手法では感知できなかった関係性や重要性を見出すことができる。例えば予定通り退院できるためには「寝返りができる」や「排尿姿勢が取れる」などがかなり上位に来る。一方、ほとんどの治療で喫煙指数とBMIは強い関係があるなど、推測はされてきたものの優先順序を含めた明確な証明がなかったものも浮かび上がってきた。各種マスターの整備と普及や解析者の養成などまだまだ課題は多いが、こうした仕組みは新薬開発やベストプラクティスの追求、ガイドライン検証、最適検査計画、最適薬剤投与プログラムなどの他、影響度の殆どない観察内容や薬剤、検査など患者と医療者の負担軽減や社会コストを低減し、より良いアウトカムを得られる価値ある医療につながるだろう。本事業の最終目的はreal world big dataを解析し、治療プロセスを改変してより良い医療を目指し続ける、いわゆるLearning Health Systemを病院やベンダーを越えて構築することにある。