一般社団法人 日本医療情報学会

[2-B-1-03] へき地での総合診療医育成におけるインターネット活用―その意義と可能性―

*井上 真智子1 (1. 浜松医科大学 地域家庭医療学講座)

Post-graduate training, Rural Medicine, Medical Education, Family Medicine, Learning Community


医学教育では、専門的な知識・技能以外に、態度領域での身につけるべき能力がある。具体的には、省察的実践者としての態度、倫理観やプロフェッショナリズム、生涯学習能力などがある。へき地における若手医師養成プログラムの事例よりインターネット活用の意義と可能性を考察する。
浜松医科大学総合診療専門研修プログラムは、静岡県菊川市、森町、御前崎市の自治体病院と家庭医療クリニックを主たる研修の場所とする4年間の後期研修プログラムである。現在は専攻医15名、指導医11名が在籍し、過去には修了生を17名輩出した。県内を中心に連携施設は22施設あり、専攻医は定められた診療科目についてローテーション研修を行う。専攻医らは毎日顔を合わせるわけではなく、日頃はそれぞれ別のところで研修を行っている。そこで、相互の学びや知の共有を生み出すために以下のような取り組みをしている。
第一に、月2回グランドラウンド(GR)という勉強会を全員で行っている。医学生・初期研修医も含め、30数名の参加となるため、新型コロナウィルス感染症の流行が始まった時期からはオンライン開催とした。対面に比し、オンラインでは、発表者と参加者との間でのインタラクションの性質が明らかに変わった。発表準備や当日の発表において、ウェブフォームを活用し、全参加者からの意見をもとに専攻医は省察を深めている。第二には、WorkplaceというSNSにより、経験事例で学んだことや、情報共有を行っている。総合診療では幅広い知識と事例への深い洞察が必要となるが、SNSでの発信や受信という行為によって記憶の定着や思考が促されているといえる。加えて、対面での振り返りやミーティング、メンタリングを行い、多様な方法・アプローチを組み合わせることで総合的な学びを支援している。今後さらに系統的なナレッジマネジメントにつなげていくことで、卒後医学教育における一つのモデルとなりうると考える。