Japan Association for Medical Informatics

[2-E-2-05] ウェアラブルセンサを用いた一般病棟での不穏予兆検知

*Yuji Ohno1, Toshinori Hosoi1, Masahiro Kubo1, Sanae Yoshida2, Tomoko Sato2, Mayumi Moriguchi2 (1. NEC, 2. 医療法人社団 KNI 北原国際病院)

Agitation, Delirium, Wearable sensor, Heart rate variability analysis, HRV


入院患者が不穏(不穏とは、一般に、穏やかではない、体動が激しい、興奮しているなど不安で危険な精神状態やそれに伴う行動を差す)を発症すると、患者のインシデントリスクが高まるとともに、医療者の負荷増大にも繋がりうる。そこでNECと医療法人社団KNIは共同で、不穏発症前の予兆を検知し事前に対処することでインシデントリスクや医療者負荷の抑制に繋げる研究テーマに取り組んでいる。
 不穏の発症と自律神経の異常や心拍変動(HRV)とは相関があるという関連研究がある。これまでの関連研究の多くでは、ICUにおいて心電計で取得した心電図波形でのHRV解析が行われてきた。しかし、不穏はICUだけでなく本来は心電計が不要な一般病棟でも起こりうる。さらに心電計は、患者の不快さに繋がり、不快さが不穏を引き起こしうる。そこで本研究では、測定負荷が低いウェアラブルセンサで取得したHRV解析により、不穏予兆を高精度に検知することを目的とした。
 心電計との差異が小さいことを確認できたウェアラブルセンサを利用し、同意を取得した患者の心拍と正解付けの元となる映像を、のべ123件分収集した。映像から抽出した正解データと、心拍から生成したHRV特徴量とから機械学習(SVM)でモデルを生成した。正例数は3,486、負例数は364,242であった。ランダムにデータを3分割し学習、検証、検定を行い、検証でのAUCからモデルを選択、検定データでのAUCが0.80という結果を得た。本モデルを用いて不穏予兆検知を検証した結果、74%の検知率で予兆を捉えることができた。
 本研究の結果、ウェアラブルセンサで取得した心拍を用いたHRV解析による不穏予兆検知の可能性を示すことができた。予兆を検知した患者に対して適切な対処をすることで不穏発症を抑えられ、インシデントリスクや医療者負荷の抑制に繋げることができると考えられる。