Japan Association for Medical Informatics

[2-F-3-01] 臨床研究におけるリアルワールドデータ(RWD)活用に向けた期待と課題

*Daisuke Koide1 (1. 東京大学大学院医学系研究科)

Real World Evidence, Clinical Research, Academic Research Organization


パンデミックとして新型コロナウイルス感染症が世界的な大問題となっており、新たな治療法やワクチンの開発に期待が寄せられているが、そのような新たな治療法の開発に臨床研究は欠かせない。臨床研究、とりわけ治験においては長い年月と多大な費用がかかることから、その効率化が求められるとともに、また臨床試験は評価しやすい対象集団が設定されるために市販後の実臨床とは異なる環境下となることも多い。このような市販前の開発段階の限界は、Too few (少ない症例数) 、Too simple(併用薬など限定したシンプルな投与方法)、 Too narrow(肝・腎機能障害の合併症は除外した限られた症例) 、Too median-aged(小児・高齢者が少ない限られた年齢)、Too brief(限られた期間)から5Toosと言われる。そのため市販後に期待した有効性が示されなかったり、思いがけない副作用が問題化して、甚大な被害となった場合は薬害として認識されたりすることもある。また近年、医療分野でも情報システム化が進み、電子カルテも普及していることから、そこに蓄積されるデータを解析して新たな知見を得ることにも期待が国内外において寄せられている。しかしもともと研究目的に収集されているデータではないことから、評価において不足する情報も多く、データとしても欠測も多い。そして収集されないデータが交絡となったり、また患者背景や医療環境も様々であることからバイアスが生じやすく、解析や評価が難しくなったりする。また何よりもデータそのものが標準化されていないことが多いことから、年度や施設を超えてデータを収集することが困難である。これらRWD活用に向けた期待と課題についてアカデミアの観点から具体的に論じる。