Japan Association for Medical Informatics

[2-G-1-06] 病理診断支援システムの構築:SIP「AIホスピタルにおける高度診断・治療システム」事業における取り組み

*Kazuhiro Suzuki1, Hideaki Mizobe3, Shunya Ueno3, Manabu Takamatsu2, Naoko Tsuyama2, Akira Mase4, Takaaki Endo3, Akira Nabetani3, Kengo Takeuchi2, Masahiko Oguchi1 (1. 公益財団法人がん研究会有明病院 データベース&バイオバンクセンター, 2. 公益財団法人がん研究会がん研究所 病理部, 3. キヤノン株式会社 R&D本部 医用製品技術開発センター, 4. キヤノンメディカルシステムズ株式会社 ヘルスケアIT第二事業部)

AI Hospital, Digital Pathology, Image Recognition


当院は、内閣府のSIP第2期から開始された「AIホスピタルにおける高度診断・治療システム」事業に採択され、AI技術の積極的な活用により、医療職だけでなく患者さんやご家族の負担軽減・診断補助・教育やコミュニケーション支援等を目指した取り組みを行っている。本発表では、キヤノン(株)ならびにキヤノンメディカルシステムズ(株)と共同開発を行ってきた病理診断支援システムについて報告する。病理診断部門では、検体が到着してから病理医が診断業務を完了するまでに多数の工程があり、デジタル化されていないものも多い。当院ではPhilips社のデジタルパソロジー装置を導入してミクロ画像のデジタル化を進めているが、共同開発しているシステムでは、切り出し図の作成やミクロ画像・肉眼像の両方を用いた診断業務そのもののデジタル化・AI導入を実現した。
AIによる病変領域の推定は、大腸ESD(内視鏡的粘膜下層切除)検体から開始し、病理医がアノテーションを行った図を正解として機械学習を行い、肉眼的な病変範囲の予測を約90%の精度で実現した。ミクロ画像については病変組織と正常組織をタイルとして機械学習を行い、病変組織の予測を約98%の精度で実現した。これらのAIモデルをアプリケーションに組み込み、切り出し図を作成する機能やミクロ画像と肉眼像を同時に参照しながら病理診断業務を行う機能とあわせ、病理診断支援システムを構築した。
病理医数が米国の1/3である我が国の状況において、病理診断部門のデジタル化・AI導入は必須事項であり、他消化管疾患や手術検体への適応拡大を実現するべく、共同開発作業を継続している。