データ駆動型の医療経営においては、診療業務に並行して生成される情報に基づいた内部環境の分析に基づく戦術的な業務改善と、医療機関を取り巻く外部環境の分析に基づく戦略的な中長期計画の策定・推進とを組み合わせて、組織の成長を図ることが大きな目標となる。これまで我が国では、病院情報システムの普及により院内のデータを利用した戦術的な業務改善事例が多く蓄積されてきている一方で、外部環境分析に基づく戦略的な組織成長に関する議論・実践の事例は豊富とはいえない状況にあった。こうした差は、外部環境に関する情報が未整備であった過去に起因してきたと考えられるが、今世紀に入ってからはDPCデータの整備による医療機関の診療実績の可視化、NDBによる全国の診療実態の把握というデータの充実と、人口の高齢化に対応するための医療・介護の総合的な確保や地域医療構想の策定・地域医療計画の見直しなどの政策的な取り組みの中で外部環境分析の方法論は大きく進化してきている。
　本発表では、人口・患者数の推計に基づく医療需要データとDPCオープンデータに基づく医療提供データとを組み合わせた外部環境分析の実例について紹介するとともに、個別医療機関の経営の枠組みを越えて地域医療システムの持続可能性を高め、パフォーマンスを向上させて行くための外部環境分析のポテンシャルについて考察する。