Japan Association for Medical Informatics

[2-H-1-04] ICTを用いた新型コロナウイルス感染症宿泊療養者の健康観察システム

*Masayuki Koyama1, Takumi Tanikawa2, Fukuda Jun3, Seiko Himiyama5, Hirotoshi Mizuno4, Syuji Uemura4, Yasuhiko Ishii1, Hirofumi Ohnishi1 (1. 札幌医科大学医学部 公衆衛生学講座, 2. 北海道科学大学保健医療学部 診療放射線学科, 3. NPO法人 EnVision環境保全事務所, 4. 札幌医科大学医学部 救急医学講座, 5. ESRIジャパン株式会社)

ICT, COVID-19, Residential Treatment, Labor Efficiency


【背景と目的】

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が爆発的に拡大し、札幌市においても医療提供体制の移行が行われ、宿泊療養や自宅待機者が急増した。これら軽症罹患者の健康状態をリアルタイムかつ不足なく把握することと、見込まれる膨大な作業量およびデータベース入力が大きな負担となり、第一波流行期における喫緊の課題であった。また、COVID-19は急激に状態が変化する症例が散見されるため、多数発生する宿泊療養者の状態を適切なリスク因子のもとに評価し、正確に把握することも同時に求められた。

【方法】

厚労省では保健所等の業務負担軽減および情報共有の迅速化を図るため、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム(HER-SYS)を開発し、2020年5月15日から試験運用を開始した。我々はHER-SYS開始前より宿泊療養者の健康管理を行うためのスマートフォン(スマホ)とQRコードを用いた入力支援システム(COVIDヘルスチェッカー[通称こびまる ]:意匠申請中のためシステム要件の記載は最小限とする)を開発し、札幌市内の宿泊療養施設Aにてパイロット試験を行ったのち、施設Bにて5月11日より実装した。

【結果】

施設Bにおける運用1ヶ月時点での本システム利用率は81.7%であった(392/480例)。年齢は中央値で47歳(10〜77歳、女性:58.8%)であった。スマホ入力ができない宿泊療養者に対し、スタッフによる代行入力を行い、電話による聴取時間(L)と代行入力時間(A)を計測した。期間内1件あたりの平均Lは5分42秒、平均Aは4分17秒であり、約10分の時短が得られ、これを全利用者で示すと約80時間に相当した。宿泊療養施設から受け入れ医療機関への入院は6件であった。

【結論】

本システムを用いることで、保健所職員らの作業時間の大幅な低減のみならず、宿泊療養者の正確なリスク管理が可能となった。