一般社団法人 日本医療情報学会

[3-A-1-03] 臨床検査におけるデータ二次利用研究の紹介

*堀田 多恵子1、康 東天2 (1. 九州大学病院検査部, 2. 九州大学大学院医学研究院)

JLAC10, Secondary use of data, Indirect Reference Intervals


臨床検査値は医療における診断、治療、経過観察に不可欠なものである。MID-NET®においても医薬品のリスク評価として利用されており、データの特性を区別できる共通コードシステム(JLAC10)によって分類されている。また、JLAC11へ改訂予定であり、粒度が細分化されるコードをデータ分布に基づき統合する必要性も想定される。そこで、MID-NET利活用検体検査項目の一つであり、JLAC10では適切に分類することができないCA19-9、同じく日常診療における使用が高い40項目についてデータの二次利用を試みる研究について報告したい。
 膵癌等の腫瘍マーカーであるCA19-9とLewis血液型との関連性は、Lewis抗原とCA19-9両者とも合成の際にLewis酵素を必要とする点が共通している事が広く知られている。この酵素が欠損しているLewis陰性者(Le(a¯b¯)型)では、CA19-9を合成できず、腫瘍マーカーとして利用できないにも拘わらず、日常的に検査が繰り返されている。先行研究においてLewis陰性者(Le(a¯b¯)型を識別可能なCA19-9閾値があり、閾値未満値に対し繰り返しコメントすることで無効検査削減に有効であった。CA19-9をJLAC11の粒度で分類し、各々に適切な閾値を設定する事により、協力医療機関内での適切な利用促進につながると考える。
 JCCLS共用基準範囲(40項目)は全国の約3割の検査室が採用している、国内において最も使用率の高い基準範囲であるが20歳代から60歳代の健常人から算出されたものであり、小児及び高齢者の測定値を判断しがたい。しかし、MID-NETの膨大な検査データから適切な除外基準を用いることにより、月齢別、年齢別の基準範囲が得られるのではないかと考える。これらの試みで得られた知見を報告したい。