一般社団法人 日本医療情報学会

[3-A-4-02] 病院薬剤師による戦略的な医療情報等の活用術
~アカデミアとの共同研究及びAMED事業等も含めて~

*関 利一1 (1. (株)日立製作所 ひたちなか総合病院 TQM統括室経営支援センター)

ICT, PBPM, Polypharmacy, Academia, AMED


(株)日立製作所ひたちなか総合病院(以下:当院)が位置するひたちなか市は、人口 15.6 万人の地方都市で、医療圏別医師偏在指数が315位という医療過疎地域である。このような地域で安全に切れ目なく、質の高い医療を実現するには、ICT(Information and CommunicationTechnology)を基盤とした医療情報の整備が必要である。
 当院は、2014年9月にひたちなか健康ITネットワーク(以下:NW)を構築、同年11月には、NW基盤を有効利用する目的で院外処方における薬物治療管理プロトコール(以下:PBPM:Protocol Based PharmaceuticalManagement)の運用を日本大学薬学部のご指導の下に地域薬剤師会と開始し、形式的な問い合わせを簡素化した。
 さらに医薬分業における継続的な質向上と問題点の解決、患者ニーズに合わせ各種地域PBPM(内服抗がん剤、残薬調整、吸入指導等)を薬局ビジョンに則して整備してきた。
 2016年4月からは、社会問題となっているポリファーマシーに関連するアドヒアランス不良患者の残薬に対して、残薬解消PBPM導入により、2年間で約10,500剤を解消した。
 2019年10月からは、茨城県ポリファーマシー事業を当地域で展開、残薬解消データの解析と「腎シール」を用いた調剤プロセスについて検討した。さらに2020年3月には、NWを利用した「0410」対応を新型コロナ対策本部として検討した。
 この他のアカデミアとの研究では、2015年に日本医療研究開発機構委託研究開発事業(AMED)の中で「地域横断的な医療介護情報のICT化により、世界最先端の臨床研究基盤等の構築を加速化するための研究事業」を行い、「ICT等を使用した看護職員等の動態把握ツールを用いた安全性等に係る医療技術評価事業」を実施した。2018年には、「臨床研究等ICT 基盤構築研究事業」、2019年からは、戦略的イノベーションプログラム(SIP:Cross-Ministerial Strategic Innovation Promotion Program)の中で、AIを用いた医療現場向けスマートコミュニケーション技術の開発を「EMIEW3」等で研究している。
 個人的には、医療情報の「社会価値、経済価値、環境価値」を常に考え、未来投資戦略であるSociety 5.0を意識した社会薬学のフィールドでアカデミアと連携した研究・開発を続けたい。