[3-B-1-02] 医用画像診断における深層学習モデルの開発
Deep learning, Medical images, Structured database
コンピュータの計算能力の加速的な向上と深層学習に代表されるアルゴリズム革命によって、特に画像認識の一部の課題に対しては、機械による識別性能が人間の識別限界を超えるに至ったと言われている。OECD諸国の中で、CTやMRIのなどの放射線画像診断装置を人口あたり最も多く有している本邦は、膨大な医用画像を蓄積している。こうした医用画像は、とりわけ現代のがん診療において、疾患の診断、治療方針の決定、治療及び経過観察のいずれの過程においても大きな役割を果たしている一方で、データ分析の視点から見ると、不均質で構造化されていない。すなわち、日々の臨床から生み出される質的、量的に膨大なデジタルデータを、良質で構造化された大規模なデータセットへと変換し、最先端の人工知能技術を用いた価値創造の契機を創出することが重要である。 こうした視点に立って、国立がん研究センター中央病院・研究所では、人工知能技術を活用した統合的ながん医療システムの構築に取り組んできた。本講演においては、病院内の医用画像をコンピュータによる解析、学習、推論の対象となるようなビッグデータへと効率的に変換するための我々の取り組みについて紹介する。特に、医用画像を起点とし、診療情報を含めて構造化するためのプラットフォームについて、我々のプロトタイプを取り上げる。続いて、一般画像と比較した際に医用画像において考慮するべき特殊性について問題点を整理し、それぞれについての技術的な解決の方向性に関して具体的な事例と共に発表する。特に、臨床医が医用画像を読影する際に、異常な部位に本来存在するべき正常な解剖学的情報を想像し、そこからの画像情報の差分を頭の中で評価していると言える。こうした臨床医の認識過程を再現するような医用画像のアルゴリズム構築に取り組んでおり、その一部について紹介し、有効性について議論させて頂きたい。