[3-B-2-05] 国立大学病院遠隔バックアップシステム(The GEMINI Project)のシステムリプレースと新機能
Business Continuity Planning, Remote Backup, SS-MIX2, THE GEMINI PROJECT
2011年に発生した東日本大震災では、地震や津波の浸水被害を受けた被災地の医療機関で医療情報システムの損壊や流出により医療記録が消失する事態が起きた。これを受け、文科省では平成24年度補正予算で「国立大学病院間における医療情報システムデータのバックアップ体制の構築事業」の実施を決定し、全国の国立大学病院が遠隔地にバックアップデータを保全できるシステムの構築を行った。このシステムはTHE GEMINI PROJECTと名付けられ稼働していたが、設備の老朽化に伴い2019年度にシステム更新を実施することとなった。本発表では、この巨大プロジェクトのシステム更新の方針と手順、新機能の導入について概説する。
本プロジェクトは、東日本・西日本のデータセンターに SS-MIX2形式の診療データと、電子カルテのフルバックアップデータの2種類のデータのバックアップを行っている。システム更新の方針としては、対象データは踏襲した上で、なるべく送受信方式を大学間で共通化する仕組みを導入した。具体的には、旧システムでは電子カルテベンダごとに行っていたSS-MIX2送受信・保管システムを共通化し、一括調達とすることでメンテナンスコストの低減と簡略化を図った。また、SS-MIX2は旧システム稼働中に様式が変更されたが、既存データの移行と再出力を実施することで、過去データの損失なく可能な限り新しいバージョンのSS-MIX2データを保管できるようにした。さらに、バックアップシステムとは別に「自己診療ダウンロードシステム」の導入を企画した。これはスマートデバイス向けのSS-MIX2ビューアーアプリを開発することで、患者が自らの診療データを閲覧できるようにするものである。2020年6月時点では、全国立大学病院のSS-MIX2データの完全移行は未完であるが、移行完了後希望する大学病院から順次患者向けに公開する予定である。