[3-B-3-03] 臨床におけるICD活用の現状とICD-11導入のインパクト:消化器分野において
International Classification of Diseases (ICD), Gastroenterology working group, Hepatology and Pancreaticobiliary working group, Internal Medicine Topic Advisory Group
現行のICD-10は、1990年にWHO総会で承認、本邦では1995年から適用されており、この30年間で2回小改訂が行われた。ICD-11は、2007年に改訂作業が開始され、2018年6月に公表、2019年5月の世界保健総会で採択された。
ICD-11では、第13章に消化器疾患がまとめられており、ICD-10と比較してその基本構造は大幅に改訂されている。まず第1階層として、1)解剖学的位置による分類(口腔疾患、食道、胃・十二指腸、小腸、虫垂、大腸、肛門管、肝臓、胆道、膵臓、腹膜)に始まり、2)多領域にまたがる疾患(憩室、虚血、ヘルニア、炎症性腸疾患、機能性消化管障害、消化器処置後の疾患)があり、3) その他(胎児・新生児の消化器系疾患、消化器系または腹部の症状・症候・臨床所見)が続く。さらに、第2階層には、A.後天的な解剖学的/形態的変化、B.運動障害、C.炎症、D.血管性疾患、E.非腫瘍性ポリープ、F. 消化管の構造的発生異常(第20章)、G.腫瘍(第2章)などの疾患群や疾患名がある。現在は日常診療でよく遭遇する疾患であっても、ICD-10では分類されていなかったり、「その他の疾患」に含まれていたりした疾患が、ICD-11ではこの第2階層で独立した新しいカテゴリーとして加えられた。例えば、消化管疾患では、胃食道逆流症、円柱化生食道上皮(バレット食道)、吸収不良や蛋白漏出症、潰瘍性大腸炎、憩室疾患、ポリープ、肝疾患では、非アルコール性肝疾患、代謝性肝疾患、胆膵領域では、胆管炎、慢性膵炎、自己免疫性膵炎、嚢胞性膵疾患などである。そして、第3階層には、具体的な疾患(亜分類)名が列挙されている。さらに詳細な情報が必要な際には、ポストコーディネーションも可能である。
2019年上半期に、厚労省からの依頼でICD-11の和訳作業を完了しており、現在本邦での適用に向けた作業が行われつつある。