[3-B-3-04] 糖尿病関連領域から見たICD-11の特徴と課題
ICD-11, Diabetes mellitus, Multiple parenting
糖尿病は、高血糖を主徴とする様々な成因からなる病態であり、また多岐にわたる急性・慢性臓器合併症を生じる。病型や合併症の分類は、臨床と研究の長い歴史を経て少しずつ変遷しており、またほかの臓器ともオーバーラップするため、最新の知見と今後の融通性、及び臨床診断との整合性、などをICD-11にどのように取り込むかが、大きな課題であった。
ICD-11では、糖尿病の大分類は国際的なコンセンサスに従っている1型糖尿病の中に、SPIDDM(slowly progressive IDDM)とFulminant type 1 diabetes(劇症1型糖尿病)という2つの亜型が、termとして新たに採用された点が注目される。
糖尿病の特徴である慢性合併症は、ICD-10では種類やステージに分けてすべて糖尿病の章で扱っていたため、きわめて複雑で実用性に乏しかった。ICD-11では糖尿病と合併症を別々にコードし便利になったが、合併症の扱いはそれぞれの臓器での構成に依存している。また主流「diabetic kidney disease」という新たな概念がtermとして認められたが、今後の位置づけが重要になるだろう。
病因分類と臨床像による分類の混在や、複数の親疾患(double parents)をもつ病態の扱いなど、糖尿病を通じて明らかとなったICD-11全体に関わる課題も少なくない。腫瘍性疾患は、ICD-11全体を通じて部位と悪性度で表現され、機能的分類が欠けており、糖代謝異常をともなう内分泌腫瘍の扱いが混乱している。遺伝子異常による疾患についても、臨床診断と遺伝子診断(確定診断)の問題、複数の臓器にわたる疾患の扱い、発症前診断などの課題がある。将来の新たな疾患研究の成果の取り込みも課題となろう。