Japan Association for Medical Informatics

[3-C-2-01] 福島県における帰還住民のための健康支援アプリケーション開発プロジェクト

*Hironori Nakano1,2,3, Aya Goto4, Takashi Ohba5, Kazuki Yoshida6, Kenneth NOLLET1, Michio Murakami7, Tetsuya Ohira1,2, Atsushi Kumagai8, Koichi Tanigawa9 (1. 福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター, 2. 福島県立医科大学医学部疫学講座, 3. 兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科, 4. 福島県立医科大学総合科学教育研究センター, 5. 福島県立医科大学医学部放射線健康管理学講座, 6. 医療創生大学 看護学部, 7. 福島県立医科大学医学部健康リスクコミュニケーション学講座, 8. 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 9. 福島県ふたば医療センター附属病院)

personal health record, e-Health, Mobile Health


【背景と目的】
東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故による長期の避難生活と、社会心理的要因の変化が、住民の健康に悪影響を及ぼすことが明らかになっている。そのような中で避難指示解除により、震災前の居住地へ帰還する住民の健康サポートが課題となっている。本研究は、帰還住民及び住民をサポートする保健医療行政などが継続的支援のために利用できるモバイルアプリケーション(以下MA)を開発する上での、ステークホルダーのニーズを明らかにすることを目的とした。
【方法】
①住民対象ニーズ調査:いわき市の復興公営住宅住民、ボランティアを対象に、調査員による聞き取りによるアンケート調査を行った。②支援者対象ヒアリング:福島第一原発周辺の自治体(いわき市、富岡町、大熊町、楢葉町)で活動する専門職(保健師や介護福祉士など)から、我々が計画しているMAへのニーズの聞き取り調査を行った。
【結果】
住民へのニーズ調査では、高齢となるほどスマートフォンやタブレット所有率が低く、各個人でのMA利用の可能性が低いことが明らかとなった。自治体の行政・保健医療機関職員(保健師や介護福祉士など)のヒアリングからは、MAの目的を5つに分類することができた。また、健康医療に関する情報を集約することから、情報セキュリティ対策に高い関心があることが明らかとなった。
【考察】
この種のMAは、国内外でブームの状況があるが、ニーズとの乖離などで利用者数が伸びていない。様々なステークホルダー(地域社会、医療従事者、専門家、患者など)からの開発に関する助言を集約する場を設け、開発の各段階において、ステークホルダーのコメントをMAの仕様や運用に反映できる体制を整え、真に住民のために役立つMA開発を進めたい。(本研究は、環境省放射線健康管理・健康不安対策事業(放射線の健康影響に係る研究調査事業)の一環として行われた成果である。)