[3-D-2-05] 3次元心房形状モデルに基づく心房細動興奮伝播様式の再現と心筋焼灼術治療をめざした電気生理学シミュレーション
Computer Simulation, Atrial Fibrillation, Arrhythmia, Cardiac Electrophysiology
[背景]
心電図など既存の測定方法ではその実態が十分に把握できない不整脈に、心房細動(AF)がある。発作性AFの治療には、カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)が有効である。しかし、長期に亘って停止しない非発作性AFにおいて、心筋焼灼術による治療成績は十分な結果が得られていない。
[目的]
MRIデータを元にヒトの3次元心房の形状モデルを作成し、電気生理学的なコンピュータシミュレーションを実施する。非発作性AFの典型的症例を再現し、さらに心筋焼灼術による有効な治療戦略に向けたシステムを開発する。
[方法・結果]
シミュレーションで用いた3次元心房の形状モデル作成には、汎用3次元モデル作成ソフトBlenderを使用した。このモデルは心筋組織の心外膜面と心内膜面のみで構成されたサーフェスモデルであるため、サーフェスモデルから心筋内組織を含めたユニットモデルへ変換した。3次元心房形状において全体のユニット数は127,702であった。作成したユニットモデルにヒト心房筋細胞の活動電位を再現する微分方程式(Ramirez et al. 2000)を組み込み、心房内の不整脈や心筋焼灼術治療を想定したシミュレーション実験を行った。シミュレーションの実行はワークステーション(HP Z800)を用いた。ペースメーカー細胞である洞結節からの電気的興奮の発生および周囲心筋組織への伝播をシミュレーションにより再現した。
[考察]
3次元心房形状ユニットモデルにおいて、基本となる興奮伝播様式は再現できたが、臨床で見られる典型的な非発作性AF症例の再現には至っていない。本モデルではユニット数が不足と思われる。今後はユニット数を増やして、より細密なシミュレーションの実施を図る予定である。心房の線維走向や不均質性など、AFの修飾要素を追加し、シミュレーションによる理論的な非発作性AFの治療戦略構築を目標とする。