[3-D-3-02] 漢方薬の多剤処方はどのような条件で起こりやすいか~診療科および薬剤の観点からの分析~
Polypharmacy, Kampo Medicine, Real World Data, Electronic Medical Record
【はじめに】
薬剤の多剤併用のうち害をなすものはポリファーマシーと呼ばれ、医療の課題となっている。我々は薬剤の中でも特に漢方薬に着目し、これまでに漢方薬被処方者のおよそ1/5に漢方薬の多剤処方がみられたことを報告した。本研究では、漢方薬の多剤処方はどのような条件で起こりやすいのかを明らかにするため、処方診療科と処方薬剤の2つの観点から解析した。
【方法】
対象は2008年1月1日~2018年12月31日の間に当院を受診して医療用漢方製剤を処方された患者とし、持参薬報告は除外した。処方期間を算出可能な頓服以外の用法で、日単位で多剤処方となっている処方オーダーのみに限定し、オーダー数の多い①診療科および②薬剤を集計した。
【結果・考察】
①診療科:処方数の多い順に、総合診療科(47,935処方)、心療内科(14,848処方)、精神科神経科(5,725処方)であった。1日あたりの併科数は最大で4科であったが、97.2%は単一科からの処方であった。このうち総合診療科には漢方外来が設置されており、総合診療科および心療内科には漢方専門医が在籍していた。
②薬剤:処方数の多い順に、大建中湯(9,086処方)、六君子湯(6,922処方)、補中益気湯(6,456処方)であった。1日あたりの処方薬剤数は最大で7剤であったが、多剤処方の89.8%は2剤の処方であった。
多剤処方されやすい薬剤の組み合わせは処方数の多い順に、真武湯×人参湯(355処方)、大建中湯×六君子湯(333処方)、補中益気湯×六君子湯(192処方)であった。いずれも構成生薬の重複がみられた。
漢方薬の多剤処方は頻度は多くないものの、間質性肺炎など重篤な副作用につながる恐れもある。今後は、さらに漢方薬による副作用の発生状況についても解析し、漢方薬のポリファーマシーの実態解明と予防策の提案につなげていく。