[3-D-3-03] 認知症治療薬の維持量に至る服用経過と抗コリン薬との併用に関する実態調査
Dementia, Acetylcholinesterase Inhibitor, Patient Medication Record, anticholinergic agents, prescription survey
【目的】コリンエステラーゼ阻害剤(AChEI: ドネペジル[D]、ガランタミン[G]、リバスチグミン[R])とNMDA 受容体阻害剤(メマンチン[M])は、いずれも最終的な維持量に至るまで、低用量から段階的に漸増して服用する。こうした認知症治療薬の用量変更が適切に実施できている患者の割合を算出するとともに、AChEI とは作用が拮抗する抗コリン薬との併用の実態を明らかにすることを目的とする。
【方法】外来患者を対象に、2014、2015、2016年度の各年度ごとに 14 日以上の処方日数で2 回以上処方を受けた患者の調剤歴を取得して解析した。さらに4種の認知症治療薬を処方された患者とACBスケールを有する抗コリン薬(ACB 薬) を処方された患者の調剤歴を抽出し、各認知症治療薬の服用患者の割合、維持量に至るまでの漸増に係る処方日数、副作用発症などにより維持量まで増量できない患者や中止した患者(処方日数90 日未満)の割合を算出した。
【結果】2016 年度における認知症治療薬服用患者3,540 人を解析した結果、D単独服用者55.9%、DとMの併用者10.6%、G単独服用者13.5%、GとMの併用者3.6%、R単独服用者4.4%、M単独服用者14.2% であった。同年度中にD3mg 錠の服用患者4.4%、5mg 錠54.9%、10mg 錠9.7% であった。3mg 錠を服用する155 人のうち、3mg 錠の服用を中止した患者13.5%、3mg 錠の服用を継続(処方日数180 日以上)した患者27.0%、5mg 錠の服用に移行した患者38.1% であった。5mg 錠を服用する患者1942 人では、5mg 錠の服用を中止した患者5.6% であった。AChEI とACB 薬の併用患者は24.5% で、ACB スコアの合計が4 以上の併用患者が2.9% であった。
【考察】定期的に処方状況を確認し、認知機能の増悪や副作用の発症を予防する必要がある。