[3-F-3-05] 小児髄芽腫陽子線治療における放射線誘発性二次がんに伴う費用分析のための決定木モデルの構築
proton therapy, radiation-induced cancer, decision tree, pediatric medulloblastoma
【背景と目的】小児髄芽腫は、集学的治療により長期生存が期待されている。一方、播種再発予防の全脳全脊髄照射に伴い放射線が正常組織に照射されるため、放射線誘発性二次がん等の有害事象の発生が臨床的な課題となっている。近年、正常組織への線量を低減できる陽子線治療により、二次がんリスクの低減が期待されている。小児陽子線治療は保険診療で行われるが、従来のX線による放射線治療に比べ患者の費用負担が大きい。そこで、陽子線治療の二次がんリスク低減による費用対効果を検討する前段階として、本研究では放射線誘発性二次がんに伴う費用の分析モデルを構築した。
【方法】3~15歳の小児髄芽腫の患者を対象とし、陽子線治療とX線治療における放射線誘発性二次がんに伴う費用を計算するための決定木モデルを構築した。初めに、陽子線治療またはX線治療を行った場合の二次がんリスク、および二次がんに伴う費用について文献調査を行った。次に、二次がんの発症に影響する要因を踏まえてモデルの構造を決定し、文献調査の結果からパラメータを検討した。
【結果と考察】決定木モデルは3段階で分岐する構造となった。1段階目は照射する放射線の種類、2段階目は患者のリスク分類(標準リスク群と高リスク群)、3段階目は二次がん発症の有無で分岐した。このモデルでは、陽子線治療とX線治療後の二次がんに伴う費用の比は常に一定となり、陽子線治療を行う場合の二次がんに伴う費用は、X線治療を行う場合に比べ約6分の1であった。今後は、このモデルを用いて小児髄芽腫に対する陽子線治療とX線治療の費用比較を行う予定である。