[3-G-4-06] レセプトデータを用いた5大がんのPhenotypingの精度評価
cancer screening, health insurance data, five major cancers
健保組合では、がん検診データとレセプト情報を保有しており、レセプト情報からがんの発症が分かると、がん検診の精度が把握できる。レセプトデータから5大がん(胃、肺、大腸、乳、子宮頸がん)の発生を推定するアリゴリズムとして知られる小川法では、5大がんの病名があってがんの治療がある患者、または、5大がんの手術治療を実施した患者をがん患者とすることを基本としている。本研究では、小川法を利用した5大がんのがん患者の同定精度を大阪大学医学部附属病院(阪大病院)のデータを用いて評価することを目的とした。
2014年1月~2017年12月に阪大病院に受診歴のある患者150467人を対象とした。阪大病院のがん登録から起算日が2011年1月~2018年12月までのデータを抽出した。対象患者のうち、がん登録上の患者数は、胃がん1213人、肺がん907人、大腸がん1162人、乳がん1288人、子宮頸がん760人であった。最初に5大がんが治療された日をがん治療開始日として集計すると、対象期間の患者数は胃がん1191人、肺がん807人、大腸がん1259人、乳がん1333人、子宮頸がん523人であった。陽性予測値はそれぞれ0.74、0.71、0.69、0.79、0.85であった。また、2017年12月までに5大がんと診断された患者を母数として感度を求めると、それぞれ0.59、0.59、0.67、0.76、0.50であった。
陽性予測値はある程度高い値であったが、偽陽性は、がんの患者でありながら、臓器の同定間違いが考えられる。一方、感度は期待したほど高くなかった。阪大病院で診断されたが、治療は他院で実施された症例が偽陰性の原因と推測される。このケースは、健保組合での調査であれば、患者が異なる医療機関を受診してもレセプトは統合されるので問題ないと考えられる。今後、偽陽性、偽陰性の原因について確認する予定である。