一般社団法人 日本医療情報学会

[4-D-1-03] 話者の意図を適切に伝達可能とした多言語医療対話シート作成システム

*福島 拓1、重野 亜久里2 (1. 大阪工業大学, 2. 特定非営利活動法人多文化共生センターきょうと)

multilingual, medical support, information-sharing support


現在,世界的なグローバル化を背景に,多言語間コミュニケーションの機会が増加している.しかし,母語以外の言語の習得は難しく,多言語間コミュニケーションの支援が求められている.我々は多言語間コミュニケーション支援を目的とした医療情報システムの研究開発を行っており(尾崎他2017,福島他2019,など),医療情報学連合大会などで発表を行ってきた(福島他 2012,吉野他2013,など).しかし,これらのシステムでは医療従事者から患者への意図の伝達は支援できていたものの,患者から医療従事者への意図の伝達支援が十分とは言えなかった.この課題を解決するために,タブレット端末を用いた多言語医療対話シート作成システムの研究開発を行っている.本システムは,医療従事者が医療対話で使用を行う質問群を「対話シート」という形式にあらかじめまとめている.あらかじめまとめた対話シートを用いることで,文の入力時間や多言語翻訳時間の短縮を可能としている.また,画像や尺度,選択項目などを用いることで,患者に伝達したい意図の整理を促す.このことで,患者の意図を医療従事者に正確に伝達可能としている.
本システムは,(1)多言語間において正確な意図の伝達を行う,(2)医療従事者が知りたいことを患者から正確に得るために,患者からの回答を整理する,(3)医療機関や医療従事者ごとにカスタマイズ可能な仕組みとする,の3つの設計方針をもとにシステム構築を行っている.これらを実現するために,全ての文を翻訳可能な機械翻訳と,正確に翻訳が可能な用例対訳の併用を行っている.また,テキスト情報以外に画像や尺度,ひな形を活用して翻訳誤りを減少させる仕組みを有している.本稿では,設計方針をもとに構築したシステムの詳細,システムを用いた実験とその評価について詳しく述べる.