一般社団法人 日本医療情報学会

[5-A-1-01] 医療情報に関するナレッジ・マネジメントの在り方

*小林 利彦1 (1. 浜松医科大学医学部附属病院 医療福祉支援センター)

medical information, electronic medical records, Information utilization, knowledge management


医療情報は病院にて多くの職員に利活用されるだけでなく、施設間での情報共有・伝達にも有効利用されている。ただし、部門・部署、職種等の違いによって利活用の目的や内容等は異なっている。
 実際、病院内の各種業務がオーダリング化・電子化されたことで、事務部門では正確な現場情報の収集が可能となり患者サービスの向上につながった。また、入力項目の多くがコード化・マスター化されたことで、経営情報等の蓄積や分析作業等も容易になった。診療現場では電子カルテ時代へと移行するにつれ、医療情報の共有が容易になり、医療安全面での利点だけでなく、自部門の学習効果にもつながった。ちなみに、紙カルテ時代には当たり前であった問診票やオーダ用紙等の散乱や、外注検査結果の別スキャン処理、カンファレンス用の症例サマリー印刷などは行われなくなった。なお、最近は全国レベルで医療情報や各種データが共有できるようになり、データベースを利活用した診療判断なども一般化している。さらに、その方法論として、AIなどを活用した補助診断の可能性も示唆されている。
 医療情報システムに関しては、JAHISの定義でいうLevel 4・ 5への展開は必ずしも進んでいない。その背景には、費用負担の問題や医療情報の標準化の遅れが未だ存在するが、それ以上に診療関連データのボリュームが極めて膨大になってきている現実もある。経営資源であるヒトと時間が限られている状況下、必要かつ有益な情報のみを施設間で共有・伝送できるシステム作り等も再考すべきである。
 情報とデータは表裏一体の関係であり、必要かつ選択された情報やデータをストックし二次活用が可能なデータベース構築を図ることは重要であるが、医療界以外で進んでいる「何でもかんでも」という方針での情報・データ集積ではなく、一定領域の標準化されたデータを基にした実利用が医療界でのナレッジ・マネジメントの在り方だと考える。