一般社団法人 日本医療情報学会

[5-D-1] 感染症対策目的での医療情報の取り扱いと法倫理:企画趣旨

*藤田 卓仙1,2 (1. 慶應義塾大学医学部, 2. 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター)

COVID-19, Infectious Diseases Prevention Law, Personal Data, Contact tracing, Privacy


本報告では、本ワークショップの企画趣旨並びに国内外での情報利用の事例の紹介を行う。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含む感染症対策においては、医療情報を含む個人情報が収集・利用が重要である。法律上の権限に基づき積極的疫学調査等が実施され、保健所や医療機関が個人情報を収集し、感染拡大の抑制に向けた対策や情報公開が実施される(一次利用)。さらに、この過程で収集された個人情報の二次利用として、医学研究が実施・公表され、情報共有が図られる。さらに、COVID-19対策では、IT技術の活用も大きな検討課題となった。我が国では、LINEやYahoo等の民間企業が有する情報、Bluetoothを用いた接触確認アプリ等の情報が用いられている。中国などの海外では、さらに位置情報等のより個人のプライバシーに踏み込んだデータを用いている国もある。しかし、陽性者や濃厚接触者を追跡するための様々な技術の活用に関しては、国家による過度な監視につながるものであるという批判も大きい。
このように感染症対策において情報の利活用は大きな役割を果たしているが、どのような情報を誰が用いてもよいのか、感染症予防法上の情報収集規定との関係等について、立法論を含む十分な議論がなされたとは言い難い。そこで、本ワークショップでは、今後のCOVID-19の再拡大や新たな新興感染症に備えるため、感染症学、情報学、法学、倫理学の観点から現状の課題を整理し、中長期的に適切な医療制度や感染症対策立法が実現することを目指した議論を行う。