一般社団法人 日本医療情報学会

[5-D-1-03] 位置情報と感染症対策ー歴史と現状

*奥村 貴史1 (1. 北見工業大学)

health crisis management, pandemic response, mobile devices


感染力が強く健康障害を生じうる感染症の制御のためには、患者の隔離だけでなく、濃厚接触者の特定と健康監視が求められる。しかし、同居人や同僚、同級生等の濃厚接触者特定は容易であるものの、初発例が訪問した大規模商業施設や公共交通機関における接触者を効率的に追跡することが困難であった。そこで、患者の居住地域やの移動情報を一般公開し、接触可能性のある住民に保健所への連絡を呼びかけてきたが、多くの住民はこうした情報に関心を示さない。また、感染症患者の住所や移動経路の詳細情報は、プライバシーに深く関わることから、行政機関として詳細に公表することが出来なかった。この問題に対して、我々のグループでは、2017年頃より、患者と住民双方のプライバシを守りつつ効果的な感染症対策を実現する携帯電話技術の応用に取り組んで来た。その後、2020年初頭より発生した新型コロナウイルスによるパンデミック対応として、近距離通信技術(Bluetooth)を用いた接触者追跡手法が実用化され、各国においてパンデミック対応へと投入された。わが国においても、新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)として、2020年6月に厚生労働省より公開されている。本報告では、この感染症対策における携帯電話技術の活用について、技術的な歴史と現状、将来展望について情報提供する。