一般社団法人 日本医療情報学会

[2-A-3-05] 医療介護ビッグデータを活用した連携状況の可視化

*松田 晋哉1 (1. 産業医科大学 医学部 公衆衛生学)

演者の教室では過去15年以上にわたり地域の保険者と協力し、医療及び介護レセプトを個人単位で連結して分析できるデータベースの構築を行ってきた。
社会の高齢化は医療介護ニーズの複合化を求める。医療と介護が制度的に分かれている現状を前提とすると、その間の連携をいかにスムーズに行っていくかが課題である。実際、厚生労働省もこの問題意識に基づき連携に関する診療報酬および介護報酬を数多く設定している。本シンポジウムではこれらの報酬がどれだけ算定されているかを医療・介護レセプトを用いて明らかにすることを試みた結果を示し、今後の他職種連携の課題について論考してみたい。
分析に用いたデータは西日本の自治体の2012年4月から2017年3月までの間に一般病床(結核病棟を除く)及び療養病床に入院していた後期高齢患者と介護施設に入所していた後期高齢者の医科レセプトおよび介護レセプトである。
作成したデータベースの医科レセプトから介護支援連携指導料、退院支援加算(療養病床)、退院時リハビリテーション指導料、退院時共同指導料、退院前訪問指導料など、介護レセプトから退院時共同指導加算、退院・退所加算を算定された患者を、それぞれ1入院単位、1入所単位でカウントして把握した。
全体で比較的多く算定されているのは退院支援加算(一般病床)(33.2)介護支援連携指導料(13.5)で、他の項目の算定率は10.0未満であった。いずれの指標も二次医療圏間で大きな差があり、例えば介護支援連携指導料は最大の医療圏が15.6であるのに対し、最低の医療圏は7.8となっていた。いずれの指標も、単なる医療側から介護側への情報提供でなく、医療側と介護側がカンファレンスや訪問などを通じて直接情報共有することが要件となっている項目で比が低い値にとどまっていた。
以上の結果を見る限りにおいて、我が国では医療保険・介護保険で報酬として評価される項目が対象とする連携は進んでいない。この状況を改善するためには、異なる職種がリモートで共同で検討ができる情報システムの開発、その前提としての記録の標準化が必要であるとかんがえられる。