一般社団法人 日本医療情報学会

[2-A-4-03] データ二次利用に向けた医療機関側の取り組みとその将来展望 -東海国立大学機構での取り組みを例に-

*山下 暁士1,3、諸橋 朱美2、朝田 委津子1,3、大山 慎太郎1,3、山下 佳子1,3、白鳥 義宗1,3 (1. 東海国立大学機構 医療健康データ統合研究教育拠点、2. 東海国立大学機構 名古屋大学医学部附属病院 先端医療開発部データセンター、3. 名古屋大学医学部附属病院 メディカルITセンター)

近年、大量の診療データから新たな知見を見出す医学研究、いわゆるデータ駆動型研究を行うニーズが高まってきている。これまでは疾患レジストリやレセプトデータベースのデータが用いられてきたが、多様な疾患を対象に自由度の高い研究を行う目的で複数医療機関の病院情報システム内のデータを利用する方向へシフトすると目されてきた。しかし、施設間だけでなく施設内でもシステム間でデータの一貫性が欠如していることなど様々な要因から病院情報システム内のデータの利活用は極めて限定的なものにとどまっている。

その状況を打破するため、当院では2018年1月から稼働している新システムの設計の段階からデータの標準化、データ構造の明確化、データ出力の一元化に取り組んできた。例えば、標準コードの積極的な採用、院内の全システムで一元的にマスターを管理する仕組み、全部門システムから収集可能なデータを全て集約するDWHの採用など、そのいくつかは過去にも報告してきた。その取り組みは、2018年度より始まったいわゆる「臨中ネット」の中で継続され、さらに洗練されると同時に、データの標準化やデータ品質管理に対する当院の貢献に寄与している。

現在、2020年度に発足した東海国立大学機構の一部として、我々の取り組みはその直轄拠点の1つである医療健康データ統合研究教育拠点の重要な1事業となっている。拠点での取り組みは単に医学系研究でのデータ相互利用の促進を目指すだけではなく、病院情報システムのデータを活用した診療支援システムや病院管理システムが中小の病院にまで導入されるであろうことを見越し、データの形式と内容を東海地区で共通化していくことで、それらシステムの導入の迅速化、低コスト化、低リスク化を図っていくことも目指している。

こういった地道な活動がSociety 5.0を実現するための重要な基盤となると考えている。