[2-B-3-02] COVID-19に関連するPHRへの期待と課題
COVID-19は、2020年初頭からパンデミックとなり、全世界で多大な犠牲者と経済的な停滞をもたらした。2021年前半からようやくワクチンが実用化されたが、変異株の広がりも加わり、いまだに収束する様相がない。 国際間の往来には、国境での「渡航証明」として、2020年はPCR陰性証明書が用いられたが、2021年にはワクチン接種履歴証明が加わることとなった。しかし、PCR陰性証明は紙で運用されたため、途上国での偽造販売の報道がなされた。これらから、全世界で今やワクチン接種履歴も含めたCOVID-19関連PHRが期待されている。国際間の情報伝達には相互運用性が重要であり、HL7 FHIRを用いた「Common Pass」に期待する。 COVID-19関連PHRには、PCR陰性証明、抗原陰性証明、抗体陽性証明、ワクチン接種履歴、COVID-19罹患歴などが記録されると考えられる。 このようなPHRが確立されると、渡航の安全性・迅速性が向上するとともに、国内移動の安全性のみならず、大きな催しや飲食店への入場から、病院のお見舞いなど多岐にわたり活用されることが想定される。米国は2021年5月に、職場に入るスタッフのワクチン接種を雇用主が要求することを合法化しており、8月にはCNN社の未接種のスタッフ3名が解雇されたことが報道された。しかしながら、妊娠(可能性含む)や副作用の履歴からワクチンを打つことができない市民への差別を起こさない配慮は絶対に必要であり、例えばPCR陰性証明なども併せた運用するなどを行なう等での対応は可能である。 発表者が代表研究者を務める厚生労働科研「ユースケース・ベースのPHRサービスによるOpen FHIRと電子カルテの連携を目指すクラウド型医療連携プラットフォーム構築研究」でもユースケースとしてCOVID-19関連PHRも実装し、2022年度には実証研究を計画している。 なお、日本でCommon Pass活動を推進しているコモンズ・プロジェクト日本委員会から、2020年11月に日本医療情報学会へ、コモンズ・プロジェクトの活動への協力の依頼があり、理事会承認をしている。