一般社団法人 日本医療情報学会

[2-C-1-01] 生活習慣病のPHRについて、アカデミア/臨床側からの提案

*中島 直樹1,2 (1. 九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター、2. 日本医療情報学会)

スマートフォンを起点とする治療アプリは、個人の健康医療情報や、生体情報、行動情報などを取り込み、適時にリコメンデーションを提供するアプリで、言い換えるとPHR(Personal Health Record)機能の一つである。米国では糖尿病領域などを中心に10年程度の歴史があり、すでに評価もされている。本邦でも2020年12月には禁煙アプリが保険収載され、いよいよ「治療アプリ処方」の時代が始まった。生活習慣病治療の三本柱である食事療法、運動療法、薬剤療法への強力な支援ツールとして、さらには三つの治療法に続く、第四の治療法としての「情報療法」の期待が高まる。相互運用性等の課題解決のために、2021年4月に「民間PHR事業者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針」が公開され一歩前進したが、治療アプリを開発する製薬会社やPHR事業者には、必ずしも臨床現場や患者の視点に対する理解が進んでおらず、データの信頼性、医療施設からの検査結果のETL、医療施設によるデータ閲覧や利用、患者側のユーザビリティ、などに課題があり、これらが将来のPHR事業の健全な発展を阻害する可能性がある。 日本糖尿病学会と日本医療情報学会(JAMI)は2011年に常置合同委員会「糖尿病医療の情報化に関する合同委員会」を設置し、生活習慣病ミニマム項目セット集(糖尿病、高血圧症、脂質異常症、慢性腎臓病)に続き、2018年に健康者および4疾患対象のPHR推奨設定を公開し、ユースケースとしてのPHR運用と項目セットの標準化を進めてきた。また、JAMI課題研究会に設置されたHL7 FHIR日本国内実装検討WGがFHIR実装ガイド(JP core)を策定し、相互運用性を持つPHRのための基盤整備が進みつつある。さらに、2021年度中には厚生労働省はマイナポータルからの特定健診情報・薬剤情報のPHRなどへのAPI連携によるデータ利用を開始し、国の姿勢やPHR基盤の推進も明らかになってきた。本発表では、デジタルトランスフォーメーションにおけるPHRの期待やあるべき姿についても議論したい。