Japan Association for Medical Informatics

[2-D-1-04] 追加理由調査によるICD-10対応標準病名マスター整備方針の考察

*Junko Kamei1, Masaaki Tanaka2 (1. 川崎医療福祉大学 医療福祉マネジメント学部 医療秘書学科, 2. 川崎医療福祉大学 医療福祉マネジメント学部 医療情報学科)

diagnostic term, MEDIS standard disease name master, ICD-10 code, master maintenance, standard set

【背景および目的】
 ICD-10対応標準病名マスター(以下、マスターと記す)の年2回の定期的整備は、主として利用者からの要望申請に基づく対症療法的なものであり、これまでもマスター整備の難しさが叫ばれてきた。本研究では、ICDコーディング整合性の観点から至近の追加病名の構成を調査することで、その追加理由の現状を推察し、マスターの整備方針について考察することを目的とした。
【方法】
 マスターVer.4.06からVer.5.05に追加された病名を抽出後、Ver.4.06の索引を形態素に用いて分解し、その構成により8つのパターンに類型化した。なお、分解は、MeCabによる形態素解析と後方最長一致を基本とした独自のアルゴリズムを用い、いずれか妥当な分解結果を採用した。
 分解後の要素に基本病名(以下、分解後基本病名と記す)が含まれる場合は、そのICD-10(2013)コード(以下、ICDと記す)と追加病名に付与されているICDを比較し、それらの相違を分析した。
【結果】
 抽出された追加病名は930件で、修飾語と基本病名に分けられるものが全体の35.9%を占め、追加病名と分解後基本病名のICDの相違は64.2%に認められた。分解パターンの解釈では、「ICDが変化する詳細な病名を修飾語の利用で表現できなかったもの」が32.5%、「修飾語で合成できるがICDが変化するもの」が29.2%あった。
【考察】
 ICD変化を理由とする追加が一定数認められたことから、システム仕様や運用によりICD修正ができないという利用者側の課題を、ICD網羅性の視点からの一括的なマスター整備により軽減することが可能と考えられた。
【結語】
 本研究では、追加病名の分解調査と追加理由の推察から、ICD網羅性を意識した一括的整備がシステムを選ばない普遍的マスター整備の一助となることが示唆された。