Japan Association for Medical Informatics

[2-F-1-01] 人工知能を用いた在宅輸血患者の危険行動検知システムの開発

*Akinori Nishikawa1,3, Yoshiki Kusumoto2 (1. 和歌山県立医科大学, 2. 株式会社サイバーリンクス, 3. 赤坂クリニック)

Home care, AI, Home transfusion, alert system

【目的】 通院困難な輸血を必要とする患者にとって在宅輸血は有効な治療である。しかし、輸血中の見守りや合併症出現に対応するため、医療者が輸血実施中に患者宅で常に付き添うことは人的資源から難しい。我々は、安全な輸血実施のため患者の映像を、人工知能を用いて解析し、危険行動を医療者に通知するシステムを構築し、家族による見守りの負担を軽減することを目的とした。【方法】赤坂クリニック(神戸市)にて在宅輸血を定期的に実施している患者の在宅輸血時の映像を14回(1輸血当たり2時間弱)記録した。録画した映像をもとに、インテル社OpenVINOツールキット(2D人物姿勢推定モデル:human-pose-estimation-0001)を使用し、 両耳、両目、鼻、首、両肩、両肘、両手首、骨盤左右、両膝、両足首の計 18個のキーポイントの位置を検出した。それぞれの位置をXY座標軸に展開し、頭部の傾き、体幹の傾き、四肢の傾きを計算し、臥位、座位、立位などの体位、上肢の屈曲を判定するアルゴリズムを作成した。更に、体位変換時(転倒などにつながる)、上肢の屈曲(輸血滴下不良に影響)が3分以上続く場合にアラート内容をメール通知する機能を実装した。【結果】 1回の輸血中の平均メール通知数は7.5回であり、臨床上十分対応可能な件数と考える。アルゴリズムが判定した座位や臥位、上肢屈曲といったメール通知と実際の体位の一致率は8~9割程度であったが、立位は判定できなかった。2D人物姿勢推定モデルを利用したため正面座位を立位と誤認識した結果であった。【考察】 高齢者や認知症患者の見守りは家族だけでは困難で、本システムのサポートにより在宅輸血の安全性向上につながる可能性がある。今後、3D人物姿勢推定モデルを利用し、体位判定精度の向上を目指したい。