[2-F-1-04] 米国診療データを活用した2型糖尿病向け処方選択支援技術の開発と評価
Clinical decision support system, Disease management, Artificial intelligence, Chronic disease
【背景と目的】2型糖尿病は代表的な生活習慣病のひとつであり、長期にわたる適切な治療を必要とする。患者最適な処方選択を支援するため、我々はこれまでに、治療種別のアウトカムを実臨床データから予測する処方選択支援システムの開発を進めてきた。本発表では、予測性能向上を目的に開発した、治療遷移構造に基づくアウトカム予測手法について報告する。【方法】米国ユタ大学の診療データ27904例を用いて、3か月後にHbA1c<7%などの治療目標を達成する確率を、治療種別に予測する技術を開発した。提案法は、データ内の処方パターンを遷移グラフでモデル化することで、治療状態に応じた予測と処方推薦を実現する。7割のデータで学習したモデルを3割のデータに適用し、以下を評価した。1)従来法である勾配ブースティング決定木を比較対象に、治療達成確率の予測誤差をBrier Scoreで評価した。2)米国糖尿病学会の診療指針を参考に、最大の確率で推薦された処方の特徴を調査した。また、予測の妥当性を臨床医3名に確認いただいた。本研究はユタ大学と(株)日立製作所研究開発グループで定める倫理審査基準に則り審査、承認され、実施された。【結果および考察】1)従来法の予測誤差0.162を下回る0.158を得た。キャリブレーション誤差は、従来法0.013を大きく下回る0.002(84.6%減)を得た。2)従来法の推薦処方では、指針で推奨される段階的に強度を増加する処方が57.8%含まれたが、提案法では98.6%含まれ、より指針に則していることが確認された。また、提案法の推薦処方が、臨床医の感覚と一致する旨を確認いただいた。以上より、従来技術に対する優位性と、臨床的有用可能性を確認した。【結論】患者最適な処方選択を支援する2型糖尿病向け処方選択支援技術を開発した。今後、本技術の臨床的有用性を前向き臨床研究にて評価する。