Japan Association for Medical Informatics

[2-F-1-07] コンパクトな疾患知識ベースIllness scriptを利用した問診票推論の実現

*Kazutaka Noda1, Yasutaka Yanagita1, Daiki Yokokawa1, Takanori Uehara1, Yosuke Hirano2, Masatomi Ikusaka1 (1. 千葉大学医学部附属病院 総合診療科, 2. ハロラボ合同会社)

Diagnostic Decision Support System, Symptom Checker, Knowledge Base, Illness Script

背景: 病歴に基づく推論を行う症状チェッカーや診断支援システムでは、知識ベースが未だ重要な役割を担っている。しかし、既存ツールは推論時に求められる入力項目数が多く、診断補助ツール普及の妨げになっている可能性がある。一方、診断のエキスパートは問診票の情報だけでも効果的な推論を行うことができる(Int J Gen Med 2013;7:13–9.)。そこで、これらのエキスパートが利用している疾患の特徴を端的に表したillness scriptを知識ベースとして整備し、少ない病歴情報量での推論の正確性を検証した。
目的: 各疾患のillness scriptを知識ベースとして整備し、問診票相当の入力による推論の正確性を他の既存ツールと比較する。
方法: 570疾患についてillness script〔有病率、年齢、性別、key feature(症状、発症様式、受診までの期間、症状推移)〕に関する情報をkey-value形式のデータ構造で知識ベースに整備し、問診票相当の入力によって疾患リストを生成する単純なプログラム(以下、ポケット問診)を作成した。Semigranら(BMJ 2015;351:h3480)が作成した45症例のヴィネットについて医師3名がポケット問診に入力し、正答率をSemigranらの調査で対象とされたツールと比較した。
結果: ポケット問診の上位1位の正答率は44%(36-52%, 95%CI)、上位3位以内では67%(59-75%, 95%CI)であり、Semigranらが調査した23ツールと比較してポケット問診は上位1位の正答率では3番目、上位3位以内の正答率では4番目に高かった。
結論: Illness scriptを構成要素とした知識ベースにより、問診票相当の病歴情報量でも、既存ツールと同等の診断精度が得られうる。