一般社団法人 日本医療情報学会

[2-F-2-02] 臨中ネットの仕組みを活用した臨床研究事例の紹介
-COVID-19発症リスクのある併存疾患に関する研究-

*竹村 亮1、松木 絵里1,2、寺井 秀樹3、中谷 英章1,4、横田 卓5、日下部 龍巳5、遠藤 晃6、福永 興壱3、副島 研造1,3、佐谷 秀行1,7、中山 雅晴8 (1. 慶應義塾大学病院 臨床研究推進センター、2. 慶應義塾大学医学部 血液内科、3. 慶應義塾大学医学部 呼吸器内科、4. 慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科、5. 北海道大学病院 医療・ヘルスサイエンス研究開発機構、6. 北海道大学病院 医療情報企画部、7. 慶應義塾大学医学部 先端医科学研究所 遺伝子制御研究部門、8. 東北大学大学院 医学系研究科 医学情報分野)

COVID-19, clinical trial, real world data, real world evidence

広範なクリニカルクエスチョンに応えるReal World Evidenceを効果的に蓄積するためにReal World Data (RWD)を用いた臨床研究を実施することは有効である。医療機関が蓄積する臨床情報を疾患に関連するRWDとして活用し、臨床研究中核病院間で臨床研究のために共有するための仕組みとして臨中ネットが整備されている。同様の取り組みの先行事例からは実運用前のシステム構築の問題点を明確にすることの困難さが指摘されており、臨中ネットでは、その仕組みを利用した具体的な研究課題(ユースケース)を実施することで、臨中ネット運用の目的や課題などを明らかにすることとした。
2019年末に端を発するSARS-CoV-2による世界的なパンデミックおよび当該ウィルスによる感染症であるCOVID-19の発症は人々の日常生活を大幅に変える要因となり、非常に大きな注目を集めている。その発症や重症化のリスクについて明らかにすることは極めて重要である。基礎疾患の有無がリスクのひとつであると言われているが、これまで本邦においてその情報を系統的に収集、評価することは困難であった。臨中ネットを利用した非発症者を含めた大規模データの収集により、このクリニカルクエスチョンの解決が期待できる。そこで、ユースケースとして、臨床研究中核病院2施設のかかりつけ患者を対象として、COVID-19発症のリスクが高い基礎疾患を同定する試みを実行した。全82592症例中626症例のCOVID-19症例が得られ、慢性呼吸器疾患がCOVID-19の発症を高めることが示された(OR=1.99(95%CI 1.68-2.34))。
この研究を推進する中で、臨中ネットの仕組みが有効であること、また具体的な課題もあることが明らかになった。COVID-19発症リスクを高める基礎疾患の検討の結果も含め、その詳細について報告する。