Japan Association for Medical Informatics

[2-G-1-07] COVID-19流行下における時限的制度介入が遠隔診療利用に与えた影響の評価 ーレセプトデータを用いた分割時系列解析ー

*Tomoki Ishikawa1,3, Naohiro Mitsutake1, Jumepi Sato2, Junko Hattori2, Kazuo Goda2, Masaru Kitsuregawa2 (1. 一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構, 2. 東京大学 生産技術研究所, 3. 北海道大学大学院 保健科学研究院)

Health Insurance Receipt Data, Administrative Data , Interrupted Time Series Analysis

背景:オンライン・電話等通信機器を用いた遠隔診療は、対面診療の補完としての役割を担ってきた。従来「初診は対面診療が原則」等の制約があったが、2020年4月にCOVID-19流行下で対面受診が困難な患者の診療を可能にする時限的対応として、初診から遠隔診療利用が可能となった。現在、この制度緩和の恒久化が議論される一方、時限的制度介入が診療体制に与えた影響を報告した事例はない。本研究は遠隔診療の諸制度を検討する資料提供を目的とし、レセプトデータを用いた制度介入前後の比較による効果検証を行った。
方法:対象データは、ある県の国民健康保険・後期高齢者医療分レセプトの内、請求月ベースで2019年1月から2020年9月分とした。レセプトから把握可能な診療月日と診療行為コードに基づき、遠隔診療(オンライン・電話診療)と対面診療の週別件数を介入前後で比較した。さらに、2020年4月10日を制度介入の時点と設定した分割時系列解析(ITS analysis:Interrputed Time-Series)を行い、全診療件数に対する遠隔診療件数の割合の変化を分析した。
結果・考察:週別の対面診療件数は介入前で平均18,044.7(±3,680.3)、介入後で平均14,297.0(±3,212.5)であり、有意な減少が認められた(p<0.001)。同様に遠隔診療では介入前で平均55.97 (±21.90)、介入後で平均122.07 (±37.08)であり、有意な増加が認められた(p<0.001)。ITS Analysisの結果、制度介入直後に遠隔診療件数割合は164%増加したが、制度介入後の増加は認められなかった。即ち、制度介入は遠隔診療件数を増加させたが、その後の普及は進んでいないと考えられる。従って、遠隔診療の普及には更なる環境整備が必要であると示唆される。