[2-G-2-01] 尿蛋白排泄量の推測値の誤差についてのリアルワールドデータを用いた要因分析
Real world data, Kidney, Urinalysis, Urine protein
【背景】尿中の蛋白質の排泄量を24時間の蓄尿によって正確に測定することは、腎機能の評価をおこなう上で重要な指標である。しかし、24時間の蓄尿は患者への負担が大きいため、代替的な指標として随時尿によるクレアチニン補正を行った推測値が用いられている。 【目的】従来のクレアチン補正では、成人1日のクレアチニン排泄量は性別や年齢によらず一定であると仮定されている。本研究では、この仮説を検討するために、クレアチニン排泄量の性別や年齢別による変動を定量的に評価してその要因分析をおこなう。 【方法】高知大学医学部附属病院の病院情報システムに保存されている2005年から2016年の間の20歳以上の成人の患者(n=51677)について、随時尿検査における尿中蛋白定量と尿中蛋白クレアチニン補正値より、クレアチニン濃度(クレアチニン排泄量)を算出して性別あるいは年齢別による変動を調べた。また、尿中蛋白クレアチニン補正値と実測値のずれとして入院患者の24時間蓄尿による尿蛋白一日量と比較した。 【結果】男女によってクレアチニン濃度に差が存在すること、また、年齢が上がるにつれて成人のクレアチニン濃度は低下する傾向にあることがわかった。年齢が上がるとともに尿中蛋白クレアチニン補正値と尿蛋白一日量の差が増大することがわかった。 【考察】クレアチニンは筋肉の運動のエネルギー源であるクレアチンリン酸の代謝産物であるためクレアチニン濃度は筋肉量を反映していると考えられる。このために、性別において筋肉量の違いのためにクレアチニン濃度が異なり、また、年齢の上昇において筋肉量の減少のためにクレアチニン濃度が減少すると考えられる。従来の随時尿検査のクレアチニン補正において、性別および年齢によるクレアチニン濃度の変化を取り入れる必要があることが示唆される。